タイトルイメージ Vol.16
本文へジャンプ 2005年5月30日 

     −横に立って学ぶ
 

 ■子どもに振り回されず、言いなりにならず、提案していくということ…

 「このプリントやってみない?」と聞いたら、「難しそう、イヤ!」と言って、やろうとしないんです。どうしたら良いでしょう?
はたして、その「イヤ!」の言葉の中に隠されているものは…


 ■困ったとき、「どうしたらいいでしょう か?」と聞ける力

 4月のある日、私のところに一本の電話がかかってきました。茨城県に住む2人のお子さんをもつお母さんからでした。平井雷太氏の新著「らくだ学習法」を読んで、らくだ教育に興味をもたれ、インターネットで私のホームページをご覧になっての連絡でした。

 「今までH式の教材をやっていましたが、子どもが『もうやりたくない!』と言ってやらなくなってしまいました。そのことにどう対応したら良いのかと悩んでいたとき、『らくだ学習法』の表紙に書かれていた『子どもがみるみる自分から学び出す』というコピーに惹かれて購入し、読んでいるうちに『これだ!』と思ったのです。ぜひ教材を見てみたいので、お試し教材を送って欲しいのですが…」とおっしゃるので、さっそく送らせていただきました。

 教材を送って、4・5日たった頃、そのお母さんから再び電話がかかってきました。「昨日、教材が届いてすぐに、小二の娘に、『このプリントやってみない?』と聞いたら、『難しそう、イヤ!』と言って、やろうとしないんです。どうしたら良いでしょう?」

 これを聞いて、私は「らくだの学習はもう大丈夫」だと思いました。なぜなら、お母さんが、問題をひとりで抱え込まないで、私に相談してきているからです。
 困ったとき、「どうしようか」と聞けるのは、かなり大事な力だと思っていますが、このお母さんのようなケースも、親子のあいただけで解決しようとすると、拒否と押し付けだけになってしまい、かえって問題がこじれてしまうことがあるからです。


 ■どのプリントならできそう? 

 お母さんからの相談に対して、答えるのにわからないことがあったので、私から逆に質問してみました。
「難しそうというのは、どのプリントを見て言ったのですか?」
「パッと全部を見て、問題数が多いので大変そうと思ったようなんです。」
「じゃあ、実際にどのプリントが難しいかということではないんですね。それなら大丈夫です。こう聞いていただけますか?まず、小1ー3、11、24の3枚のプリントを見せて、『この3枚のうち、どのプリントならできそう?』と聞いて、もし、それでもやりたがらないようなら、『このプリントの半分だけやるとか、あるいは、目安時間が書いてあるから、その目安時間だけやるとか、いろいろなやり方があるんだけれど、どのやり方ならできそう?』と聞いてみてください。とりあえず、そう提案してみて、また電話をいただけますか?」 
 
 そうお願いしたあと、らくだ学習の基本的な考え方を聞かれるままにお答えして電話を切りました。
 それから数日するとお試し教材が返送されてきました。見ると、4日間連続してやっていました。入会申込書も同封してあり、そこには、お母さんの言葉でこう書いてありました。

 「私が口を出し過ぎてしまい、家での勉強は『強制的にさせられるもの』という意識でやっているようです。子どもが『どうしたら出来るようになるのだろう』という気持ち、『自分にできるのはこれだけ』と決めてしまわず、新しいことにチャレンジする力を持った人間に育って欲しいと願います。ただ、子育ても目標を高く掲げず、わが子のカラーを認め、親子で解りあって歩んでいきたいと思います。」


 ■「イヤ!」という言葉に隠されていること 

 らくだの学習では、子どもの声をきちんと聞くことを大事にしています。しかし、子どもの声を聞きながら、子どもが自分で決める事に寄り添っていくということは、子どもの言いなりになるということとは全然別のことです。
 このお母さんが最初に「このプリントやってみない?」とお子さんに聞いたとき、お子さんの心の中には、「やりたくない気持ち」と「やってもいいかなと思う気持ち」が同居していたと思うのです。そして、「お母さんの「やってみない?」という言葉に思わず「嫌!」と反応してしまったのではないでしょうか?

 大人でも、ちょっと大変なことを提案されたら、そう簡単に提案に乗ることはしないでしょう。「やってみたいけど・・・」という気持ちを後押しする提案でないとなかなか乗れません。ですから、私たち学習コーディネーターの役割は、子どものやりたくない気持ちに寄り添いながらも、やることを前提に、その子に今できることを提案していくのです。それが「どのプリントならできる?」とか「どのやり方ならできる?」という具体的な問いかけになっていくのです。


 ■どの子も勉強ができるようになりたいと思っている

 こういう提案ができる背景にあるのは、「どの子も勉強ができるようになりたいと思っている」という確信です。そして、「やりたくない、嫌だ」という言葉をうのみにしないで、その言葉の中に、「やりたい、できるようになりたい」という気持も隠されているのだと思っているからです。

 子どもが「やりたくない、イヤ!」と言った時こそ、その子どもの本当の気持ちが見えてくるチャンスです。「イヤ!」とも言えずにやっている子の場合、本当に今やっていることで良いのか嫌なのかがわからないので、大人のほうが「やらせているのではないか」と子供に負い目を感じることもあって、本音で語りあえない分、かえって問題なのかもしれません。ですから、学習コーディネーターは、子どもが「嫌!」と言うことが予想できる提案もあえてしながら、子どもの「嫌」と「嫌でない」の境目を探していきます。ひとつの提案に「イヤ!」と言えて、別の提案なら「OK!」ということなら、その子が自分で決めているということなのです。

 「イヤ!」という言葉に振り回されず、子どもの言いなりにならず、今できることを提案していくことは、子どもが「自分で決める」自覚をしていくのに欠かせないことなのです。
ですから、私は、親が子どもに対して無理難題を吹きかけることをけっして悪いことだとは思っていません。子どもが「イヤ!」と言うことを受け止める用意さえあれば…。

***講演会報告

■5月21日に宇都宮で行った、講演会のテーマは「生きる力を育むらくだ教材」でした。講演会は準備のプロセスが面白いのですが、お子さんがらくだ教材で学んでいるお母さんも、準備スタッフとして8回ほど行った準備会にほとんど参加し、ご自分とお子さんとの関わりを振り返って、ご自分の言葉で、次のように書いていました。ご本人の了解を得て掲載させていただきます。
   

 ●らくだ教材に感謝       M・Y
            
 「らくだ教材」との出会いは約1年前になります。
娘が小学校に入学してまもなく不登校になり、私は、どうして行けないのか、毎日娘を責め、自分を責めてきました。
娘はどんどん苦しくなり、精神的におかしい状態なっていったのです。行けないことを「辛かったんだね。今のままでいいんだよ」と心から思ってあげられるまで、約1年かかりました。すると、今まで外に出たがらずにいた子が、家以外の自分の場所を求めてきたのです。

 それで出会えたのが「学びのもり・タオ」でした。「もし、いやだったら、お母さんは、絶対に行きなさいとは言わないよ」と言っていたため、娘は訪れる決心をしたのです。
不安な気持ちで訪れたのですが、学校とは違った雰囲気で、まずは興味を持っていたピアノからやってみることになり、そのうち先生とも打ちとけ、「らくだプリントやってみる?」という言葉にすんなり「うん!」と言ったのです。

 あれほど勉強に抵抗していた子が、やっぱり学びたがっているんだ、よくなりたいと思っているんだ、と感じました。それまでは、「勉強すると元気になったと思われ、学校にまた行かされてしまう」と思っていたようです。でもこのプリントは親も先生も前に立って進めていくものではなく、誰からも指示、命令されることなく、自分のペースでやれることがよかったのだと思います。今まで私の理想を子供に押し付け、娘が精一杯がんばっていたのに「もっと、もっと」と娘の進もうとしてる前に立ってきたことに気がつきました。

 子供の前に立つのをやめ、後ろから見守ることができたのはらくだプリントのおかげです。他の教材では、どうしても教えてあげないと一人では問題が解けず、そのために私が見てあげると、どうしても「なんでできないの!」「なんでわからないの!」と思ってしまっていたのです。
でもこのプリントは違います。私は何の手助けもせず、見守ることができました。ひとりで黙々と問題を解いています。1枚のプリントをクリアできず、苦しむときもありました。でも誰も助けてくれないのです。自分が毎日やっていくことでクリアできることも、だんだん自分でわかってきました。娘がクリアできず、泣きわめくときもありました
「もうやめる!」と私も怒って言いたくなったことがあり、でも娘には「なんでそんなこと言うの!」と怒られました。「やっぱり頑張りたいんだ、よくなろうとしているんだ」とまた思い知らされました。子供が苦しんでいることは見ていて楽ではありません。でも、「ひとつの壁を乗り越えようと頑張っている時なのだ」と、嬉しく見守る自分に変わってきました。

 「らくだプリント」で子供の成長を見ると同時に、私自身も変わってきたように思います。できない自分と向き合うことができなかった私が、できない壁があることは成長できる、とてもうれしいことなのだと気付き、できないことを恐れずに前向きになれたのです。

 今、娘は学校に行っています。友人と会うと暴れていた子が、自分も勉強しているという自信からか、友人と対等につきあい、「らくだプリント」を見せています。同級生の友人とは、2年近く勉強が遅れているのに、何の恥ずかしさも感じずに、前向きに頑張っています。クラスの子に勉強ができないことを言われても、自分なりに一歩一歩らくだプリントで学べると確信しているためか、とても娘の強さを感じています。

 私は、娘が学校の勉強に遅れてしまうことばかり気にしていた頃に比べ、心がとても楽になりました。前に立って引っ張って行かなくてもいいんです。娘を心配せず、娘の力を信じ、後に寄り添って見ていてあげるだけですから…。
今は、不登校になった娘、そして「らくだプリント」に感謝しています。

 ■考現学
 
日々の生活の中で、ふっと気づいたことを、考えずに、毎日、人に伝えることを前提に書く。書いたものは、誰かに見せて赤入れしてもらう。そして、発信する。その人の経験から、その人の言葉が生まれる。